学校の特徴

甲南中学校の伝統行事「平和行進」。世界平和を願い、体育祭で「ヘイワ」の人文字を作ります。

部活動に熱心に取り組んでいて、毎年素晴らしい成績を収めます。

生徒が中心となり、どの行事にも熱心に取り組んでいます。

平和行進によせて...

1. 甲南中学校を代表する学校行事といえば、今年(2021年)で68回目を数える「平和行進」です。

  体育祭に行われるこの行進で、私たちは世界の平和に思いを馴せると同時に、自分が歴史ある甲南中学校の一員

  であることへの誇りを胸に刻みます。

   平和行進が始まったのは昭和29年(1954年)です。当時は米ソ冷戦の緊張が世界を覆っていました。

  昭和20年(1945年)の原爆投下・太平洋戦争終結から10年も経っていないこと、さらに3月にはアメリカの水爆

  実験の放射能を日本漁船が被爆した「第五福竜丸事件」が起こったことなどが重なり、「また戦争がはじまるので

  はないか」という不安を多くの人が持っていた時期でした。

   そんな中、当時の先生方が「平和の尊さを生徒たちに感じさせたい」という思いで始めたのが平和行進でした。

  ほぼ同時期に生徒が戦争経験者に話を聞き取る平和学習も始めており、これは日本で最も早い平和学習の取り組み

  だと言われています。

2. 昭和32年(1957年)の第4回から平和行進は生徒会の運営で行うことになりました。その時以降、現在でも

  生徒会が企画から練習の指導、当日の運営までを行うことが伝統になっています。平和行進の伝統は、甲南中

  学校の生徒が自主的な活動として連綿と受け継いできたものなのです。

   平成15年(2003年)には第50回、平成25年(2013年)には第60回を迎え、多くのマスコミにも取り上げ

  られました。第50回ではテノール歌手・新垣勉さんを招いての平和コンサートの開催、第60回では被爆ピア

  ノの伴奏による全校合唱や地域の手筒花火の奉納など、学校外からも多くの協力をいただきました。

  また第60回、第61回の人文字の写真は、世界の問題の解決に取り組む団体『STAND UP ,TAKE ACTION』

  プロジェクトの写真コンテストで優秀作品に選ばれました。

3. 平和行進の中身は非常にシンプルなものです。このシンプルな活動にどれだけの意味を見出すのかが、平和行進

  の永遠のテーマです。特に全校を指揮する生徒会本部は「グラウンドを一周して人文字を作ることがどうして

  平和につながるのか?」「平和な時代なんて本当に来るのか?」「そもそも平和とはどういうものなのかわかっ

  ているのか?」という冷ややかな質問に対し、懸命に答えを探さなければなりません。

  それに対して歴代の生徒会が見つけてきた答えを積み重ねたものが現在の平和行進を形作っています。

   平成21年(2009年)、第56回平和行進を担当した生徒会は「行進するトラックは戦後の世界の歩み

  (「過去」)を意味し、生徒が一旦行進を止めるバックストレートが「現在」、そして「ヘイワ」の人文字を

  作るためにすすむグラウンド中央が「未来」である」と宣言文で述べました。

   また、第57回では生徒会長が宣言で「いのちの流れ」を取り上げ、会長自身の祖母が病に倒れた体験をもとに、

  連綿と続く命の循環への感謝を行進に込めたいと宣言しました。第58回ではこの年におきた東日本大震災や

  いじめなど、身近な平和が脅かされる時代になったことを取り上げ、「この行進は『終わり』ではなく、

  これからひとりひとりが平和を求めて生きていくための『最初の一歩』なのだ」と述べました。

4. これからも平和行進は一人ひとりが平和を考え、自分なりの答えを探していく機会になっていくでしょう。

  その答えは、一人ひとりの心の中に生まれてくるはずです。

   甲南中の平和への取り組みは平和行進だけではありません。原爆が投下された8月6日または9日に全校が

  集まって戦争に関する映画を見たり、戦争体験者の講演を聞くなどの取り組みをする「平和の集い」、

  生徒会の各委員会が活動を活発化させる「平和強調週間」、さらに7月や9月に行われる「平和学習」

  などがあります。

   1990年代まで平和学習の中心は太平洋戦争・第二次世界大戦の体験を語り継ぐことでした。地域の戦争

  体験者への聞き取り調査、原爆の実物大の模型や被害範囲のジオラマ化、修学旅行で訪れる沖縄戦の実相を

  データや物語から読み解くなど、多くの授業が行われました。

   また、修学旅行を沖縄に変え、地元の人と交流しつつ、壕や平和の礎などの激戦の現座に立って戦争の

  悲惨さを学び、米軍基地問題を通して平和を守るとはどういうことなのかを考える学習を続けています。

5. さて、2021年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されました。掲げられたテーマは、

  「多様性と調和」・「未来への継承」。これらは2015年9月に国連サミットの中で決められた

  国際社会共通の目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)の理念と一致しています。

  貧困や飢餓といった問題から、人権、働きがいや経済成長、気候変動に至る21世紀の世界が抱える

  課題を包括的に挙げ、2030年までに達成すべき17の目標に集約しています。

   SDGsの理念で深く感銘を受けるのは、普遍的な目標として「誰も置き去りにしない」という

  約束を掲げていることです。自分だけではなく、周りの人すべてが幸せに暮らせる社会を実現

  させようと言うのです。真の「平和」とはこのような社会のことを指すのではないでしょうか。

   東京オリンピック2020の最終聖火ランナーであった大坂なおみさん。彼女はテニスの全米

  オープンで人種差別による黒人被害者の名前を入れた黒色のマスクを着け、人種差別撤廃への

  メッセージを発信しました。彼女のように、私たち一人ひとりでもできることは数多くあります。

  2030年の世界を変え、その先の未来に引き継いでいくためには、社会が抱える課題を「自分ごと」

  として捉え、それぞれの活動・生活の中に「平和」を浸透させていくことが大切です。

   まずは「自分自身が幸せか?」という問いから始め、学び舎を共にする仲間と一緒に、

  「甲南中でよかった!」と思える学校を作ります。その取組がきっと、グローバルな課題を解決

  する基礎となることを信じて。私たちは第60回平和行進における宣言での「平和は『ある』もの

  でも『与えられる』ものでもなく『創りつづける』もの」という思いを忘れることなく、

  これからも「平和」の実現に向けて歩き続けます。