学校長あいさつ

 2022年度本屋大賞が、「同志少女よ、敵を撃て」に決まりました。
 この作品は、第2次世界大戦の独ソ戦時に実在した女性だけの狙撃小隊を題材に、精密な戦場の描写とともに女性たちの内面の変容を描き出しています。
 発表会に登壇した著者の逢坂(あいさか)冬馬さんは、受賞の喜びの一方、ロシアによるウクライナ侵略が続いていることについて、次のように話しました。
 「ウクライナの市民や兵士、あるいはロシアの兵士がどれだけの数が亡くなっているかということを考え、また、この小説に登場する主人公セラフィマがこの光景を見たならばどのように思うかと悲嘆にくれました。小説を書く上で情熱を傾けた『ロシア』という国名で何を思うべきなのだろうかと終始考え続けています。先日、ロシア国営放送でパリ特派員として働いていたジャンナ・アガラコワさんは、『ロシア国営放送は放送の中でただ一人の権力者とその周辺の人物しか映していない。我々の放送の中にロシアはない』と言って職を辞しました。私はアガラコワさんを支持するとともに、戦争に反対する運動にかかわったことによって拘束されたロシアの人々や戦争反対の署名に名を連ねた人々を支持し、『ロシア』という国名を聞くたびにこれらの人々のことを考えたいと思うようになりました。今回も戦争を始めるのは簡単であることが実証されてしまいました。しかし、平和構築は誰かに命じられてすぐにできるものではありません。戦時においても平時においても、平和を望む人たちは平和構築のためのプロセスに可能な限り参加し、お互いに信頼を勝ち取っていかなければなりません。私が描いた主人公セラフィナがこのロシアを見たなら、悲しみはしても、おそらく絶望はしないと思います。なので私も絶望するのはやめます。戦争に反対し、平和構築のために努力をします。それは小説を書く上でもそれ以外の場面でも変わりはありません」
 思えば第二次大戦時、ナチスによって迫害されていたユダヤ人にビザを発給し、多くの命を救った杉原千畝(ちうね)さんがその功績を世界中の人々から称えられています。しかし当時、ビザの発給は日本政府の命令に背く行為であったのです。にもかかわらずビザを発給した杉原千畝さんはどうしてそのような正しい判断・行動ができたのでしょうか。
 SNS等が発達し、本当のものもフェイクのものも混在して多くの情報が日々流されています。それらを整理してしっかり考え、何が正しいのか、自分自身で判断して行動する必要があります。そのような力を身に着けるために、私たちは"学ぶ"のです。平和行進を伝統とする甲南中学校だからこそ、そのことを大切にしていきたいと思います。

 本年度も本校教育へのご理解・ご支援をよろしくお願いいたします。


 教育目標    未来を担う社会人としての基礎を身につけた生徒の育成

めざす生徒像   こ 心豊かな生徒
         う うんと勉強する生徒
         な 仲間と伸びる生徒
         ん 運動にはげむ生徒

                                    甲南中学校  校長 中條 克彦